*第12回研究会報告[ダムタイプ -dumb type-]

・日時:平成27年7月21日(火)17:00~19:30

・場所:愛知県立芸術大学博士棟 演習室

・テーマ:「ダムタイプ -dumb type-」

 

司会:牛島

書記:牛島、高山


【文献資料】

・「ダムタイプ ヴォヤージュ」畠山実ほか編 NTT出版 2002

・「新たな系譜学をもとめて」ーアート・身体・パフォーマンスー 

                     東京都現代美術館 監修

・DVD 《OR》

・DVD《memorandum》

 (名古屋学芸大学映像学科講師の伏木啓さんよりお借りしました。)

 

【研究会の進行】

(1)ダムタイプについて

(2)「OR」映像鑑賞

(3)「memorandum」映像鑑賞

 

 

(1)ダムタイプについて

 

京都を中心に活動する日本のアーティスト・グループ。1984年に古橋悌二をはじめとする京都市立芸術大学の学生を中心に結成された。性・人種・身体障害などの問題を取り上げ、映像・音響・パフォーマンスなどによって複合的に提示されるその作品は国内外で高い評価を獲得している。なかでも、古橋本人がドラァグ・クイーンとして出演する代表作《S/N》(94年初演)は、現在でもヴィデオ記録などを通じて幅広い支持を受けている。《S/N》が初演された翌年の95年には、個人名義でもインスタレーション《LOVERS》を発表していた古橋がHIVによる敗血症のため逝去。しかしその後も彼らの活動が止むことはなく、《OR》(1997)、《memorandum》(1999)などの作品が立て続けに発表されている。2002年にはNTTインターコミュニケーションセンター(ICC)で開催された「ヴォヤージュ」展で、新作《Voyage》に合わせたインスタレーションを発表。2011年から12年にかけては、早稲田大学演劇博物館で回顧展「LIFE with ART~ダムタイプ『S/N』と90年代京都」が開催されている。また、美術作家・音楽家の池田亮司、同じく美術作家の高谷史郎や高嶺格、ブブ・ド・ラ・マドレーヌなど、ダムタイプの参加メンバーの多くが個人として幅広く活動していることも特筆に値する。(artscapeより)

 また、古橋悌二が亡くなったことでダムタイプは《S/N》で終わったという人もいる。

 

(2)《OR》の映像鑑賞


ポイント→

・生と死がテーマ。

・古橋悌二の死後、彼の理念を元に制作された最後の作品。

・古橋悌二の生前から進行していたプロジェクトである。



【感想】


◎光と影の使い方について


・非常に効果的、絶妙である。

・ストロボライトが動きを制止させるような効果を作っている。静止画の連続であるとも言える。パラパラ漫画のようだ。

・写真を撮るシーンがある。これは「瞬間」を表現しているのではないだろうか。

・ビーチを連想させる場面では、強い光が舞台全面に当てられ、舞台上の影が全

て消えている。ホワイトアウトした舞台が白昼夢のようで素晴らしい。このように光を使用する技術の難しさを考えると、この作品における舞台照明は既に単なる照明の域を超えて、舞台美術そのものであると言える。


◎構成について


・複数のシーンがあるが、どのような順番で作っているのか興味がある。ある意味あまり脈絡を感じない。時間的構成について発展の余地があるように思えた。

・45分なら45分、60分なら60分である必要性をもっと感じるような構成があるのではないか。抽象的な表現の場合、音楽家がもっと関わって構成をしてもいいのでは。

・もしかして、作家が複数関わっているということが、時間的構成の弱さの原因なのではないだろうか。作品制作にあたっての中心人物は居たのだろうか。

・(上記意見に対して)古橋が存命中は彼が演出を担当していた。しかし彼が亡くなってからはあえて中心人物を置かないようにしているようだ。


◎その他の感想

・作品のダンスの振付はかなり作りこまれているように見えた。
ダンサーはChoreographic Collaborationとしてクレジットされている。単に依頼されて踊るというだけでなく、作品制作の段階でかなり話し合いをして動きを詰めているのではないだろうか。

・生と死を扱う理由は何だろうか?

・表現がある意味、わかりやすすぎると感じる。

・言葉も台詞もない抽象的な表現では、記号的な操作をすることによってしか、伝わらないこともあるのではないか。

 ・芸術は可能か。

(3)「memorandum」映像鑑賞

 

ポイント→

「記憶」をテーマにしている。

 

◎感想

 

・始まりのシーンが素晴らしい。壁を登る人物と壁の文字が、映像と生身の人間の身体とを巧みに使って効果的に絡み合わされている。

・女性ダンサーの振付は、女性性を感じさせないものになっている。

且つ、コンテンポラリー・ダンスの文脈とも違う振付で非常に上手い。

・着ぐるみのシーンは、美術界が「カワイイ」という価値観を取り入れ始めたころのもので、少々あざとく感じる。

・パフォーマンスシーンは今どのように流れているのだろう。ダムタイプのような手法は、彼ら以降、Perfumeなどのライブパフォーマンスでもごく普通に使用されるようになった。しかし、もともとあった「芸術としてのパフォーマンス」には今、新しいものや主流となるものが現れてるのだろうか。

・(上記質問に対して)某芸術誌では長い間、5年ごとにその時のパフォーマンスシーンを概観する特集を組んでいた。しかしここ10年程、そのような特集は組まれていない。このことが、質問に対する端的な回答となるのではないだろうか。


 

(文責:牛島、高山)